BtoBのSNSアカウント運用はなぜ「成果が見えにくい」のか
「SNSを始めたが、成果が出ているのかわからない」「フォロワーは増えたが、事業への貢献が説明できない」――BtoB企業のSNS担当者からよく聞く声です。
BtoCでは、SNS上の投稿や広告から商品ページへの導線が比較的シンプルで、成果を可視化しやすい傾向にあります。一方、BtoBでは購買プロセスが数ヶ月から数年にわたり、意思決定に複数の関与者が関わります。SNSの投稿がきっかけで商談が生まれたとしても、因果関係を直接的に証明することは困難です。
成果が見えにくい構造だからこそ、「何を目的に運用し、何をもって成果とするのか」を事前に設計しておくことが不可欠です。ところが実際には、「競合がSNSをやっているからうちもやろう」「とりあえず公式アカウントを作ろう」と、目的を明確にしないまま運用を始めるケースが少なくありません。
目的がなければKPIも設計できず、何をもって「成果が出ている」と判断するかの基準がありません。担当者は「フォロワーが○人増えました」「いいねが○件でした」といったSNS内の数字を報告するしかなくなります。BtoBの経営層や上長が知りたいのは「SNSが事業にどう貢献しているか」であり、フォロワー数やいいね数だけでは評価されません。
「フォロワー数は増えたが商談にどうつながったのかわからない」→「SNSは意味がない」→ 打ち切り――この悪循環を避けるためには、運用開始前に目的を設定し、事業KPIと紐づく目標を設計することが重要です。
本記事では、BtoB企業がSNSアカウント運用の目的を設定し、社内で評価される目標に落とし込むための具体的な方法を解説します。
SNSアカウント運用の全体像については、以下の記事で解説しています。
BtoB企業でよく設定される4つの目的
BtoB企業がSNSアカウント運用を行う目的は、大きく以下の4つに分類されます。自社の事業フェーズや課題に合わせて、まずは1つに絞って設定することを推奨します。
目的1:認知獲得・拡大
自社名やサービス名を、ターゲット層に知ってもらうことが目的です。
適している企業・状況:新規サービスのローンチ直後や、特定業界での認知度がまだ低い段階の企業。「○○といえばあの会社」という第一想起を獲得したい場合に有効です。
目的2:リード獲得への貢献
SNSからWebサイトへの流入を増やし、ホワイトペーパーのダウンロードやウェビナーの申し込みなどのリード獲得につなげることを目指します。
適している企業・状況:マーケティング部門がリード獲得のKPIを持っており、SEOやSNS広告以外の流入チャネルを増やしたい企業。コンテンツ資産(コラム・ホワイトペーパー・ウェビナー)がすでにある場合に特に有効です。
目的3:見込み顧客・既存顧客との関係強化
SNSを通じたコミュニケーションにより、見込み顧客や既存顧客との関係性を深めることに重点を置きます。
適している企業・状況:すでに一定の顧客基盤があり、リピートや追加提案の機会を増やしたい企業。カスタマーサクセス部門がSNSを活用したい場合にも適しています。
目的4:採用ブランディング
企業文化や働く環境の魅力をSNSで発信し、採用候補者の母集団を形成することが狙いです。
適している企業・状況:採用難易度が高い職種(エンジニア・デザイナー等)を抱えている企業や、企業の知名度が低く求人への応募が集まりにくい企業。
目標の数値水準を決める際には、ベンチマークアカウントの設定が有効です。同業他社・異業種の成功事例・ターゲット層が重なる企業の3軸から3〜5アカウントを選定し、フォロワー数やエンゲージメント率の水準を参考にすることで、現実的な目標を設定しやすくなります。
ベンチマーク設定を含む運用ガイドラインの策定方法は、以下の記事で解説しています。
目的別の目標設計:「SNS指標」と「事業指標」の2層で設計する
BtoB企業のSNSアカウント運用で最も重要なのは、「SNS上で測定できる指標」と「事業成果に紐づく指標」の2層で目標を設計することです。
SNS上の指標だけを追っていると、「フォロワーは増えたが事業にどう貢献しているのかわからない」という状態に陥ります。逆に、事業指標だけを追おうとすると、SNSとの因果関係が不明確で改善アクションが取れません。2層で設計することで、SNS担当者はSNS指標で日常の改善PDCAを回し、事業指標で社内報告を行える体制になります。
| 目的 | SNS指標(日常の改善に使う) | 事業指標(社内報告に使う) |
| 認知獲得・拡大 | フォロワー数、インプレッション数、リーチ数、エンゲージメント率 | 指名検索数の増減、サイテーション数(SNS上での自社名の言及数) |
| リード獲得への貢献 | 投稿からのリンククリック数、プロフィールアクセス数 | SNS経由のWebサイト流入数、SNS経由のCV数(WPダウンロード・ウェビナー申込等) |
| 関係強化 | エンゲージメント率、コメント数、DM数、メンション数 | 既存顧客からの追加相談・紹介件数 |
| 採用ブランディング | フォロワー数(ターゲット属性含有率)、投稿エンゲージメント率 | 採用ページへの流入数、応募数のうちSNS経由の割合 |
ポイント:「フォロワー数1万人」のような数値目標だけを追うのはBtoC的な発想になりがちです。BtoBでは「ターゲット企業の意思決定者が100人フォロワーにいる」ほうが事業への貢献度は高くなります。量ではなく「誰がフォローしているか」の質を重視した目標設計が重要です。
SNS広告と併用する場合の目標の棲み分け
SNSアカウント運用とSNS広告を併用する場合は、施策ごとに目標を分けて管理する必要があります。SNS広告(フロー型)はリード獲得数・CPA(獲得単価)で評価し、アカウント運用(ストック型)はフォロワー数・エンゲージメント率・指名検索数の増減で評価します。両施策を同じKPIで管理すると、アカウント運用が「広告より成果が出ない」という誤った評価につながるため、役割の違いを踏まえた評価設計が必要です。
SNS広告のKPI設計については、以下の記事で解説しています。
月次報告での使い方:Before / Afterで見る報告の質
2層で設計した目標は、月次の社内報告で力を発揮します。SNS指標だけの報告では社内で評価されませんが、事業指標を加えることで「事業にどう貢献しているか」が伝わります。
Before(SNS指標だけの報告):「今月のフォロワー数は520人(+30人)、いいね数は150件でした。引き続き投稿を継続していきます。」→ 上長の反応:「で、それが売上にどう関係するの?」この報告には事業KPIとの接続がなく、SNSの活動を評価する基準が示されていません。
After(2層で設計した報告):「今月のフォロワー数は520人(+30人)、エンゲージメント率は3.2%で安定しています。事業指標としては、SNS経由のサイト流入が前月比+18%、うちWPダウンロード3件を獲得しました。指名検索数は前年同月比+12%で推移しています。投稿テーマ別ではノウハウ型がクリック率最高のため、来月も重点的に発信します。」→ 上長の反応:「SNS経由のリードが増えてきているのは良い。ノウハウ型に寄せる方針で進めてほしい。」
月次報告では「SNS活動量→SNS上の反応→事業への貢献」の順で報告し、最終的に事業への貢献にたどり着く構成にすることで、上長や経営層にSNS運用の意義が伝わりやすくなります。
事業成果に紐づくKPIツリーの詳しい設計方法は、以下の記事で解説しています。
目標設定で陥りがちな3つの間違い
間違い1:フォロワー数だけをKPIにする
フォロワー数は最もわかりやすい指標ですが、BtoBではフォロワーの「数」よりも「質」が重要です。ターゲット外のフォロワーが1万人いても、商談にはつながりません。
フォロワー数をKPIにする場合は、「ターゲット属性のフォロワー含有率」を併せて追うことを推奨します。LinkedInであれば企業ページのフォロワー分析から業種・職種・役職の分布を確認できます。
間違い2:すべての目的を同時に追おうとする
「認知もリード獲得も採用も全部SNSでやりたい」と欲張ると、投稿のテーマが散漫になり、どの目的でも成果が出ない状態に陥ります。
まずは1つの目的に絞り、成功パターンが見つかってから目的を追加する段階的なアプローチが効果的です。組織規模に余裕がある場合は、目的ごとにアカウントを分けることも選択肢になります(例:マーケティング用と採用用を分離)。
間違い3:短期で成果を求めすぎる
SNSアカウント運用はストック型施策であり、成果が見え始めるまでに3〜6ヶ月の期間が必要です。1〜2ヶ月で「成果が出ない」と判断してしまうと、蓄積の効果が発揮される前に施策を止めてしまうことになります。
目標設計の段階で、「最初の3ヶ月はフォロワー数とエンゲージメント率の改善に集中する」「4ヶ月目以降にWebサイト流入数やリード獲得への貢献を評価する」といったフェーズ分けを事前に設計しておきましょう。社内の期待値を運用開始前に調整しておくことで、「すぐに成果が出ない」ことを理由に打ち切られるリスクを低減できます。
目的と目標を設計したら、次のステップとして運用ガイドラインの策定に進みましょう。投稿のトーン&マナーや承認フロー、トラブル時の対応手順を事前に定めておくことで、目標に向けた一貫した運用が可能になります。
ガイドラインに盛り込むべき項目と作成手順は、以下の記事で解説しています。
目的設定からプラットフォーム選定、運用開始までの全体フローは、以下の記事で解説しています。
まとめ
BtoBのSNSアカウント運用で成果を出すためには、「何のためにSNSを運用するのか」という目的を明確にし、その目的に紐づく目標を事業KPIと接続して設計することが不可欠です。
SNS上の指標(フォロワー数・エンゲージメント率)だけを追っていては、社内で「SNSは意味がない」と評価されるリスクがあります。「SNS指標」と「事業指標」の2層で目標を設計し、月次報告で事業への貢献を示せる体制を構築しましょう。
「目標設定の方法がわからない」「運用しているが社内で評価されない」「目標を設定したが正しいかどうか判断できない」――SNSアカウント運用の目標設計に関するお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。
当社フラグアウトでは、BtoB企業のSNSアカウント運用をゼロからサポートしております。目標設計・コンテンツ制作・投稿管理・分析改善まで、一気通貫でご支援します。
BtoBのSNSアカウント運用の目標設定に関するよくある質問
- Qフォロワー数やエンゲージメント率の目標値はどのくらいが適切?
- A
BtoBのSNSアカウント運用では、BtoCと同じ基準で測ると成果を見誤るリスクがあります。BtoBの場合、フォロワー数は月次で数十〜数百人の増加が現実的な水準です。エンゲージメント率はプラットフォームや投稿内容によって大きく異なるため、まずは自社の初期データを基準とし、月次の改善率で追うことを推奨します。絶対数よりも「ターゲット属性のフォロワーが増えているか」の質を重視しましょう。
- Q目的が複数ある場合、どう優先順位をつけるべき?
- A
まずは事業上のインパクトが最も大きい目的を1つ選び、その目的で成功パターンを確立してから次の目的を追加することを推奨します。リソースが限られるBtoB企業では、1つの目的に集中したほうが成果が出やすい傾向にあります。
- Qいつ目標を見直すべき?
- A
運用開始から3ヶ月後に最初の見直しを推奨します。初期の3ヶ月で蓄積されたデータをもとに、目標数値の妥当性を検証しましょう。その後は四半期ごとに見直しを行い、事業環境の変化や組織の優先度に応じて調整します。
- Q上長にSNS運用の成果をどう報告すればよい?
- A
「SNS活動量(何をやったか)→ SNS上の反応(どう反応があったか)→ 事業への貢献(事業にどう影響したか)」の3層構造で報告することを推奨します。本記事の「月次報告での使い方:Before / After」セクションで具体例を紹介していますので、参考にしてください。
- QSNSの成果を事業KPIと接続する具体的な方法は?
- A
Googleアナリティクスを使用してSNS経由の流入を計測する方法が基本です。投稿にUTMパラメータを付与したURLを使用することで、SNSからのサイト流入やコンバージョン(WPダウンロード等)を追跡できます。また、指名検索数の変化をGoogleサーチコンソールで定期的に確認することで、SNS運用による認知効果を間接的に測定できます。
