本記事ではこれまで100本以上ホワイトペーパーの企画制作に関わってきた経験をもとに、ホワイトペーパーの特徴、メリット、制作方法、活用方法など網羅的に解説します。
BtoBマーケティングのコンテンツとして使われる「ホワイトペーパー」
ホワイトペーパーとは
一般にホワイトペーパーとは、特定の業界やマーケットにおける課題や問題解決のための提案や専門知識をまとめた文書のことを指します。
BtoBマーケティングにおいては、マーケティングコンテンツの一種として扱われ、特定課題における解決案とともに提供元企業のソリューションやサービスがその課題の解決策の一つであることを示し、提供元企業が特定分野において専門知識や特定課題の解決するアイデアを保有しているを認知してもらう、または文書の提供と引き換えにリード情報を収集する目的で使われることが多くなっています。
次によく比較される”営業資料”と”eBook”とホワイトペーパーがどう違うのか解説いたします。
営業(サービス)資料とホワイトペーパーの違い
まず、営業資料とホワイトペーパーは何が違うのかについて紹介します。はじめに下図をご覧ください。
営業資料は、自社製品/サービスやソリューションの関わる魅力を伝えることを目的に、自社が伝えたいことを中心に構成されています。まだ既存顧客や見込み客が貴社サービスに興味を頂く手前の段階で、しっかり”自社課題を認識し、それを解決したい”と考え始めていないと、営業資料の内容を説明しても、押し売りに相手は感じてしまう場合もあるでしょう。
一方、ホワイトペーパーは、課題の認識と解決案の提言がメインになり、相手が知りたいことや相手の役に立つ情報を中心に構成されています。(記載内容は「相手が知りたいこと8割:自社のサービス紹介2割」を一つの目安にされることを当社は推奨)貴社が提供するホワイトペーパーが、相手のビジネスに役立つ情報を中心にまとめることで、”何かを売られている”という捉え方よりも”役に立った”という印象を抱いてくれる可能性があります。
eBook(イーブック)とホワイトペーパーの違い
次にeBookとホワイトペーパーは何が違うのかについて紹介します。営業資料とホワイトペーパーの比較同様にまずはじめに下図をご覧ください。
一般的にebookは、ビジュアルやイメージを中心にまとめた資料を指すことが多いと言われています。
一方、ホワイトペーパーは、専門的な内容を文章や詳細なデータを中心にまとめた資料を指すことが多いです。
マーケティングコンテンツとして、いくつかの活用例を見てみると、業界や目的によってどちらの形式を使っているかは異なる傾向があります。また、ホワイトペーパーとeBookの良いところを組み合わせて、専門的な内容をビジュアルやイメージでまとめているコンテンツも存在します。
現状は、ここまで明確な意味を理解し、使い分けをしている場面の方が少なく、ホワイトペーパーとeBookを同義として活用される場面が多いかもしれません。
BtoB企業がホワイトペーパーを活用するメリット
ホワイトペーパーの活用することで、提供元の企業には以下のようなメリットがあります。
自社やサービス・製品におけるブランドイメージの向上
ホワイトペーパーは、その業界や市場における専門的な情報を提供するための資料や文書であるため、その分野に関する専門知識を持つ企業であると認知を獲得することができます。これにより、企業が提供する情報の信頼性が高まり、ブランドイメージが向上することが期待できます。
特定課題を保有した企業との接点を持つためのきっかけ
ホワイトペーパーは、特定課題を保有した既存顧客や見込み客が資料請求またはダウンロードなどの自発的アクションをとることで、自社と既存顧客や見込み客との接点を持つきっかけとなることがあります。(リード獲得につながることがあります)
ホワイトペーパーの主な6つの活用方法
ホワイトペーパーを制作したあと、しっかり活用していかなければ、前述のメリットを得ることがはきません。ホワイトペーパーを閲覧してもらうための主な活用方法には、以下のように主な6つがあります。
自社 | 自社のウェブサイトやランディングページに掲載する |
自社 | 自社のメールマガジンで紹介する |
自社 | 自社のソーシャルメディアで紹介する |
自社 | 自社のイベントやセミナーで配布する |
外部 | 外部媒体に掲載する |
自社 | 営業時の補足資料として活用する |
それぞれについて以下にもう少し詳しく記載します。
自社のウェブサイトやランディングページに掲載する
企業のウェブサイトやランディングページ上にホワイトペーパーを掲載することで、サイトやページに来訪したユーザーの目にとまり、閲覧、資料請求、ダウンロードなどのアクションへ繋げていくことができます。また、特定分野における複数のホワイトペーパーがウェブサイトに掲載されていることで、専門的な知識がある、ノウハウを保有しているなどの印象を抱いてもらうことができます。
自社のメールマガジンで紹介する
自社が発行するメールマガジンでホワイトペーパーを紹介することで、既存顧客や見込み客に対して、お役立ち情報として提供することができます。また、メールマガジン経由でその情報を得た既存顧客や見込み客が、社内でホワイトペーパーを共有することもあり、新しい見込み客に認知が広がることがあります。
自社のソーシャルメディアで紹介する
ホワイトペーパーのダウンロード先をソーシャルメディア上で紹介したり、フォロワーやフォロー頂いたユーザーを対象に特典として提供することで、既存顧客との関係強化、または新しい見込み客の獲得につながることがあります。また、その情報がソーシャルメディア上で拡散されることで、新規のフォロワーの拡大や新たな見込み客に認知されることがあります。SNS広告を活用して早く露出量を増やす手段も取り入れるとより有効です。
自社のイベントやセミナーで配布する
イベント出展やセミナー登壇時に参加した企業担当者に、ホワイトペーパーを配布することで、参加者に対して有益な情報を提供し、企業の専門性やノウハウ、技術力を保有していることをアピールすることができます。また、イベント時には名刺交換時の特典として活用することで、新たな接点づくりの促進につながることがあります。
外部媒体に掲載する
自社以外に外部のWeb媒体に掲載しホワイトペーパーを提供する方法もあります。外部のWeb媒体は、Webサイトへの来訪数やメルマガリスト数が自社より多い場合があり、大きな効果が期待できます。ただし、媒体によっては、掲載するだけで費用がかかる、または掲載自体は無料だがダウンロードあたり成果報酬で費用がかかるなど料金体系も様々です。
営業時の補足資料として活用する
マーケティングシーン以外に、営業シーンでの活用も可能です。例えば、商談時や営業案件を進める上で、営業資料の内容だけでは情報が不足している場合、自社サービスに関わる付帯情報を補う目的や、または自社の専門性の高さや知見をアピールし、受注確度を高める目的でホワイトペーパーを活用する方法です。また、次章で紹介しますが、チェックシート型や導入サポート型のホワイトペーパーを作成することで、検討を進めやすくする補助資料として活用することもできます。
ホワイトペーパーの種類
ホワイトペーパーといっても、様々な種類があり、目的によって使い分けすることができます。
以下に代表的なホワイトペーパーの種類を紹介します。
- 調査レポート型ホワイトペーパー
マーケットや業界の動向やトレンド、調査結果をまとめたレポートのようなホワイトペーパー - 事例集型ホワイトペーパー
取り組み、施策、改善策などをまとめた事例集のようなホワイトペーパー - 課題解決・ノウハウ型ホワイトペーパー
特定の業界、部門、職種などに特化した課題と解決アイデアの情報提供を行うノウハウ型のホワイトペーパー - マニュアル型ホワイトペーパー
複数製品やサービスの機能、利点、特長、利用方法などを解説したマニュアルのようなホワイトペーパー - 導入サポート型ホワイトペーパー
導入(購入)検討層向けのチェックシート、導入プロセスを紹介する導入サポート型ホワイトペーパー
ホワイトペーパー種類の具体例
調査レポート型ホワイトペーパー
調査レポート型ホワイトペーパーは、独自に調査した結果をホワイトペーパーにする形式です。
トレンド調査をまとめた内容をコンテンツとすることが多いです。一方、トレンド調査の場合、新しいトレンドが出てくるため、ホワイトペーパー自体の有効期限は短くなる傾向があります。
例えば、当社で作成した調査レポート型ホワイトペーパーがこちらです。
本資料では、LinkedIn広告の画面から取得できるオーディエンス属性データを自社で独自に集計し、そのデータをレポート化したものです。LinkedInに関心がある方向けに広く活用できるメリットがあります。
課題解決・ノウハウ型ホワイトペーパー
課題解決・ノウハウ型ホワイトペーパーは、自社のノウハウや知見を体系的にまとめる形式です。
課題解決・ノウハウ型ホワイトペーパーは、廃れにくいノウハウであれば、ホワイトペーパーにすることで見込み顧客にとっても有益な情報となることと、コンテンツとしての有効活用する期限も比較的長い傾向になります。
例えば、当社で作成した課題解決・ノウハウ型ホワイトペーパーがこちらです。
本資料では、BtoBのSNS企画担当者、運用者向けに、「SNSの運用ガイドラインの作り方」をノウハウとしてまとめたものです。何となくでSNSごとの運用をしてしているBtoB事業者から反響を獲得できるメリットがあります。
このようにホワイトペーパーといっても複数の種類があります。企業の目的やターゲットに応じて適切に活用することで、見込み客の獲得や顧客との関係強化につなげましょう。
ホワイトペーパー制作前の準備
自社サービスや製品に関わるホワイトペーパーを制作する場合、まず以下のような準備を進めましょう。
ホワイトペーパーの目的や目標の設定
ホワイトペーパーを制作する場合、目的・目標を事前にしっかり定めておきましょう。目的と目標指標の設定例を以下にまとめました。
目的 | 目標指標例 |
---|---|
自社及びサービス/製品の認知獲得・拡大 | ・【オープンコンテンツ】ホワイトペーパー閲覧数 |
新規見込み客(新規リード)の獲得 | ・【オープンコンテンツ】新規見込み客からのホワイトペーパー閲覧数 ・【クローズコンテンツ】新規見込み客からのホワイトペーパーダウンロード/資料請求数 |
既存顧客との関係強化 | ・【オープンコンテンツ】既存顧客からのホワイトペーパー閲覧数 ・【クローズコンテンツ】既存顧客からのホワイトペーパーダウンロード/資料請求数 |
目的や目標を設定しておくことで、ホワイトペーパーを活用したマーケティング施策実行後、効果検証と課題の抽出といった分析業務をスムーズ進めやすくなります。目的・指標がないと、何を検証するのかが明確ではなく、振り返りがスムーズにできない恐れがあります。
ターゲットとペルソナの設定
ホワイトペーパーを制作する前に、ターゲットとペルソナを定めておきましょう。ターゲットとペルソナのイメージが湧かない方は下図をご覧ください。
ターゲット設定は、露出先(提供手段)の選定に繋がり、ペルソナはホワイトペーパーの内容を考える際に活用することができます。
ホワイトペーパーテーマの決定
ターゲットとペルソナを定めたら、次にホワイトペーパーのテーマを決めます。テーマを決める場合、当社では以下のようステップで要素を考えいきます。
ステップ | 検討要素 | 例 |
---|---|---|
1 | ターゲットとペルソナ | 売上●●億円以上の情報システム担当者 |
2 | 購買プロセスの段階 | 情報収集層(課題非認識) |
3 | 対象とする想定ニーズ・課題 | ▲▲に関してコスト削減するアイデアや事例を情報収集している |
4 | 伝えること(最も訴求すること) | ■■を実施することでコスト削減できる可能性があること |
5 | 落とし込む製品・サービス・ソリューション | 自社のコスト削減できるソリューション |
デザインフォーマットイメージの準備
テーマが決まったら次はデザインフォーマットのイメージを準備します。最終決定は、ホワイトペーパーの制作段階で問題ありませんが、企業によっては資料のフォーマットが決まっている場合もあります。この段階では、まず決まっているフォーマットがないか、フォーマットがあっても独自のフォーマットでホワイトペーパーを作ることは問題ないかなどを確認します。
その上で、指定のフォーマットがない場合、ターゲットペルソナの方々が日常でよく目にする資料のデザインに合わせたフォーマットを用意することでホワイトペーパーへの抵抗感が少なく、閲覧してくれる可能性が高まります。
例えば、以下のような考え方でデザインフォーマットを考えるのも一案としてあります。
a)日常的に学術的な文書に触れる機会が多い
・・・縦型レイアウト、文字多め、グラフを中心にする
b)日常的にプレゼン資料のようなものに触れる機会が多い
・・・横型、文字少なめ、アイコン、イメージ図を中心にする
ポイントは自社が良いと思うものではなく、対象としているターゲットペルソナに合わせたデザインフォーマットに仕上げることが大切です。
ホワイトペーパーの制作手順
ホワイトペーパーの制作手順について解説します。
ホワイトペーパーを制作するチームの発足
まずホワイトペーパーを作成する上で必要な役割を洗い出し、それぞれを誰が担うか決定し、プロジェクト化します。よくある例として必要な役割は以下です。
・品質管理者:最終的に露出されるホワイトペーパーの品質をレビューやチェックする責任者
・企画・ディレクション担当:スケジュールを管理したり、社内外の調整を行う。企画や一次レビューやチェックも担当
・ライティング担当:文章を作成する担当。社内の有識者にインタビューして文章を作成する場合も
・デザイン担当:フォーマットデザインや図版を作成する担当
社内対応と外注対応する箇所の決定
チームを発足した後に社内で行う部分とスキルや工数が不足しているため外注する部分を決めます。
例えば、社内にデザイナーがいないという場合は、デザイン部分を外注するという判断もありますし、素原稿の作成やインタビューは外注して仕上げを社内で行うという判断もあります。
タイトルと目次構成の作成
次にタイトル(メイン・サブ)と目次構成の叩きを作成します。
・タイトル
タイトルは読み手にとって自分ごと化しやすい内容で作成します。例えば、メインタイトルを見ただけで何が書いてあり、何を解決できるホワイトペーパーであるか想起できることが重要です。サブタイトルは誰向けなのかやどのような課題にアプローチしたものであるかが想起できると良いでしょう。
・目次構成
目次はタイトルを見た後、より興味関心をひくためにどのような構成でどのような内容が書かれているのかを示すことで、閲覧者とのミスマッチ低減に繋がり。また、タイトル目次を企画した担当者とライティング担当者が異なる場合、指示書のような位置付けでも活用することができるため、企画者とライティング担当者の間での齟齬を少なくする目的でも先に目次構成を作成しておくと良いでしょう。
デザインフォーマットの作成
フォーマットのデザインを考える上で、表示のデザインが重要となります。いずれかの方法でホワイトペーパーを露出していく際、まず目に入るのが表紙になることが多いです。表紙のタイトルが目につきやすい、表紙から何が書かれているか想起できるデザインに仕上げていくことが大切です。
ホワイトペーパーの露出方法の決定
先に述べたホワイトペーパーの活用方法を参考に、目的を達成するためにどのような方法でホワイトペーパーを露出していくのかを定めます。せっかく作ったホワイトペーパーも、読み手に届かなければ意味がありません。そのため、ここでは方法を絞り過ぎず、できる限り多くの方法を選択しておきましょう。絞ることは、効果を見ながら取捨選択していくことをおすすめします。
ホワイトペーパー制作を外注する場合のポイント
ホワイトペーパー制作の全てや一部を外注する場合のポイントを記載いたします。
ホワイトペーパー制作の外注費用相場
ホワイトペーパーを外注する場合、料金体系はさまざまなことが多いです。これには以下のような理由があります。
Web上の情報をみると、ホワイトペーパーはおよそ1本作るのに20万〜60万円程度で設定している支援会社が多いようです。この価格は”専門分野の実績”と、”どの業務を担当する”かによって変わる傾向があります。
<担当業務例>
①ホワイトペーパーを活用したマーケティング施策の設計
②ホワイトペーパーコンテンツの企画(決まっているペルソナに対して目次・構成を作成)
③ホワイトペーパーのライティング(素材資料あり/なし、インタビューあり/なしにより変動)
④ホワイトペーパーのデザイン(デザインを入れるページ数や図版数により変動)
ホワイトペーパー制作における実績
ホワイトペーパーを制作してきた実績により、外注候補先で設定している料金が変わることがあります。例えば、特定業界の実績が豊富(特定業界の知見がある制作担当が在籍している)といった場合です。
単に高い/安いという理由で決めるだけではなく、実績の観点や担当業務範囲をしっかり確認して価格が妥当かどうか判断するようにしましょう。
ホワイトペーパーの効果測定と改善方法
最後に制作したホワイトペーパーの効果測定方法と改善方法について解説します。
ホワイトペーパー露出後の効果測定と分析
ホワイトペーパーを何かしらの方法で露出するにあたり、いつ・誰が・どのように効果測定を決めておきましょう。案外、ホワイトペーパーを露出した後にどの程度効果があったかを確認していないというケースも見受けられます。しっかり効果測定と分析をしっかりすることで、露出先が悪いのか、ホワイトペーパー自体が悪いのかなど課題を見つけることが大切です。
ホワイトペーパー施策の改善と改訂
課題が見えてきたら、その課題を解決するための改善案を検討し、実行します。実行後はまた効果測定と分析を繰り返していくことが大切です。
加えて、ホワイトペーパーの内容が古くなってしまったり、何度も露出して見飽きられてくる場合もあります。その場合、既存のホワイトペーパーを改訂するのか、新規ホワイトペーパーを制作するのかの判断する期間や頻度を定めておくことで、ホワイトペーパーを活用した施策自体の効果を高めていくことができるでしょう。
当社では、ホワイトペーパーの制作についてご支援をしております。ホワイトペーパーを活用したマーケティング設計のサポートや制作業務の全てまたは一部だけのサポートも可能です。まずはお気軽にこちらのフォームよりお問い合わせください。