「生成AIに書かせたら、どこかで読んだような文章が出てきた」「間違ってはいないが、自社が書く意味を感じない」。BtoBのコンテンツ制作では、こうした行き止まりがよく起こります。

原因は指示の出し方ではなく、渡している素材のほうにあります。AIの出力は、渡した素材より良くなりません。準備の段階で何を集め、どう整理して渡すかが決まれば、出てくる文章は変わります。

この記事でわかること

  • 生成AIに任せた記事が一般論になる仕組み
  • 社内のどこに一次情報があるか、探す範囲
  • 素材を仕分ける4つの軸(出所・確からしさ・代表性・社外に出せる範囲)
  • 生データを渡さず、事実と条件をそろえて渡す方法
  • 守秘を保ったまま独自性を出す線の引き方
  • 事例が少ないBtoBで、件数を膨らませずに書く方法

なぜAIに任せると一般論になるのか

生成AIは、学習済みの一般的な知識をもとに文章を組み立てます。自社の素材を渡さなければ、出力は一般論の範囲を出ません。

ここで起きているのは、AIの能力の問題ではありません。自社に何があるかの問題です。同じキーワードを指示すれば、どの会社が使っても似た文章が出てきます。自社の素材を渡していなければ、出力に差がつく要素はそもそも入りません。

BtoBではこの影響が大きくなります。読者の母数が限られるうえ、比較検討の場面では複数の会社の記事が並べて読まれます。一般論だけの記事は、並んだときに区別がつきません。逆にいえば、自社しか持っていない素材を一つ入れるだけで、記事の位置づけが変わります。

準備の工程は、その素材を探して、使える形に整える作業です。書き始める前に終わらせておく必要があります。

一次情報を探す3つの層と、見つけやすさ・独自性の関係

社内のどこに一次情報があるか|洗い出す範囲

記事制作でいう一次情報とは、自社が直接見たり計測したりして確かめた事実のことです。この記事では、こうした情報をまとめて「素材」と呼びます。広告のクリエイティブを指す「素材」とは別のものとお考えください。

探す場所は大きく3つに分かれます。順に見ていきましょう。

運用の記録|実績・ログ・レポート

数字として残っているものが、いちばん見つけやすい層です。運用の実績、管理画面から取り出せるログ、定期的に作っている報告資料などが当たります。

この層は部署をまたいで散らばっていることが多く、コンテンツ担当の手元にはありません。営業やカスタマーサポート、開発など、記録を持っている部署に当たりを付けて依頼します。誰がどの数字を持っているかを整理しておくと、次の記事でも使い回せます。

注意したいのは、報告資料に載っている数字がそのまま使えるとは限らない点です。社内向けの資料は、条件や前提を省いて作られていることがあります。元のデータまで遡れるかどうかを、集める段階で確かめておきます。

人の中にある観察|支援現場・問い合わせ

記録になっていない層です。支援の現場で繰り返し見てきた傾向、問い合わせで何度も聞かれる質問、商談で毎回説明している内容などが当たります。

この層は本人が価値に気づいていないことが多く、聞き方を工夫する必要があります。「独自の知見はありますか」と尋ねても、たいてい出てきません。「同じ質問を何回受けましたか」「説明していて、相手が驚くのはどこですか」といった形で、具体的な場面を聞き出すほうが素材になるでしょう。

聞き取った内容は、その場で書き留めておきます。あとから思い出して書くと、記憶が整理されすぎて条件が落ちてしまうためです。

失敗と差し戻しの記録|競合が持っていない層

うまくいかなかった事例や、途中で方針を変えた記録です。この層は外に出にくいため、競合の記事にもほとんど載っていません。独自性という点では、成功事例よりも強い素材になるものです。

社内では共有されていないことが多いため、コンテンツ担当が意識して集めておきたい層でもあります。当社では、記事の制作過程で差し戻しになった箇所を記録に残す運用をとっています。

素材を一件ずつ仕分ける4つの軸

集めた素材は、まとめて扱わずに一件ずつ仕分けます。何で仕分けるかは、自社であらかじめ決めておく必要があります。当社が使っているのは、次の4つの軸です。

仕分けずに渡すと、性質の違う情報が混ざります。自社で計測した数字と、どこかで読んだ一般論が同じ強さで並ぶと、読み手にはどちらがどちらか判別できません。

一次情報を仕分ける4つの軸とそれぞれの区分

軸①出所|誰の目で見たか

その情報を、誰がどうやって確かめたのかを分けます。区分は3つです。

  • 実測:自社が計測したデータや実績
  • 現場観察:繰り返し見てきた定性的な傾向
  • 第三者公開:公開されている情報のみ

出所によって、書ける強さが変わってきます。実測なら断定できる一方、現場観察は「〜が多い」までにとどめる必要があるでしょう。第三者の情報は、自社の資料に載っていても元をたどれないことがあります。その場合は確認が済むまで、本文で断定しません。

軸②確からしさ|どこまで断定してよいか

同じ実測でも、断定できる範囲には幅があります。計測の条件が限られていれば、その条件の外までは言えません。

この軸にはいつの情報かという視点も入ってきます。1年以上前の出典に頼る主張は、現在も同じ方針が続いているかを確かめてから使いましょう。確かめた結果、変わっていれば現行の情報を主な出典に据えます。

当社が参照した外部ページのURLをまとめて確認したところ、一部はすでに到達できなくなっていました。URLは時間とともに失われます。集めた段階で、確認した日付をセットで残しておくと、あとから検証できます。

軸③代表性|1件か、複数の代表か、相場か

その数字が何を代表しているかを分けます。

  • 単一事例:特定の案件、特定の条件での1件
  • 複数の代表:複数事例の平均や代表値
  • 一般的な相場:業界として知られている水準

ここを混ぜると、1件の結果が相場のように読まれます。たとえば特定の条件で出た数字を、注記なしに載せた場合。読み手はそれを一般的な水準として受け取り、自社に当てはめて期待します。期待どおりにならなかったとき、記事の信頼が落ちるのは書いた側です。

判定で迷いやすいのは、複数の案件から集めた数字を平均した場合でしょう。件数が2〜3件であれば、平均というより単一事例の集まりに近い扱いになります。母数が小さいまま平均値として出すと、実態より安定して見えてしまいます。

元の資料に「イメージ」「参考」といった注記がある数字は、自社の計測であっても単一事例として扱うほうが安全です。注記が付いているのは、作成した本人が条件の限定を意識していた証拠だからです。

軸④社外に出せる範囲|そのまま・加工・不可

公開の可否を3段階で判定します。そのまま出せるもの、加工すれば出せるもの、出せないものです。

判定は数字だけを見て決められません。機密性は数値そのものの属性ではなく、文脈の属性だからです。単体では問題のない数字が、前後の説明と組み合わさった途端に取引先を特定できてしまう場合もあります。

絞り込まれやすいのは、次の要素が重なったときです。

要素
業種「製造業の」「人材サービスの」
規模「従業員300名規模の」
時期「昨年の下半期に」
特徴「初めて専任担当を置いた」

このうち2つまでなら候補は広く残ります。3つ以上そろうと、業界内では相手が見当のつく状態になりかねません。数字を伏せていても、周辺の記述だけで届いてしまうためです。

判定を厳しめに置く理由は、記事の性質にもあるでしょう。短い単発の発信で問題にならなかった数値が、記事では成り立たないことがあります。記事は検索に載り、生成AIに引用され、長期間残るためです。公開したあとに取り消すことはできません。

業種・規模・時期などの要素が重なると取引先が特定されることを示す図

「加工すれば出せる」とは何をするのか

加工の中身は、おもに3つです。

主体を落とす。 社名や部署名を外し、「ある製造業の企業では」のように業種だけを残します。ここで業種まで落とすと、読者にとって手がかりのない話になります。どこまで落とすかは、特定のされやすさと読者の理解しやすさの兼ね合いです。

絶対値を相対値に変える。 数字そのものではなく、変化の方向や幅で書く形です。軸③で単一事例と判定した素材は、この加工とセットで使います。

時期をぼかす。 「昨年の下半期」を「直近1年のうちに」に広げます。時系列の説明に必要な場合を除き、時期は特定の手がかりになりやすいため、精度を落として構いません。

3つとも施したうえで、なお相手が思い浮かぶなら、その素材は出せないと判定します。

判定の基準は一度決めて、使い回す

一件ずつ迷っていると、判断が担当者によってぶれます。最初の数件で基準を決め、次からはその基準に当てるほうが速く、結果も安定します。

決めておきたいのは3点です。誰が最終判断をするか、迷ったときはどちらに倒すか、そして判定の記録をどこに残すかです。迷ったときは出さない側に倒すと決めておくと、判断の速度が上がります。

出せないと判定したものは、そこで捨てずに記録として残しておきましょう。加工の方法が見つかれば使えるようになりますし、判定の理由自体が次の記事で役に立ちます。

渡し方|事実と条件をそろえる

仕分けが済んだら、渡し方を整えます。ここを省くと、仕分けた意味がなくなります。

生データを渡さない理由

資料を丸ごと渡すのは避けます。AIは資料の中の情報を平らに読むため、出所の違いや条件の有無を区別しません。

その結果、条件つきで成立していた事実が、無条件の事実として書かれます。読み手から見れば断定に見えるので、あとから直すには文章全体を組み直すことになります。

事実+条件+使ってよい範囲の3点セット

渡すときは、一件ずつ次の3つをそろえます。

項目中身
事実何が確かめられているか
条件どの範囲で成立するか(期間・対象・前提)
使ってよい範囲そのまま書けるか、加工が必要か

この形にしておくと、AIは条件を落としにくくなります。渡す側の作業は増えますが、書き上がったあとの修正が減るため、全体では短くなります。

生データを渡す場合と、事実・条件・使ってよい範囲の3点セットで渡す場合の比較

渡す前の最終確認

渡す直前に2点だけ見ます。出所を自分の言葉で説明できるか、そして断定してよい範囲を決めてあるかです。

どちらかが曖昧なまま渡すと、その曖昧さは文章に残ります。書き手がAIであっても人であっても、この点は変わりません。

BtoB特有の壁①|守秘があるまま独自性を出す

BtoBの一次情報は、顧客名や契約内容、実績の数字と結びついたものです。そのまま出せないものが多いため、コンテンツ担当はここで止まってしまいます。

出せないからと一般論に逃げれば独自性が消え、無理に埋めようとすれば事実でないものを書くことになるでしょう。この二つの間に線を引く必要があります。当社では、次のように運用しています。

社名と実数を落とし、知見だけを一般化するのは正当な加工です。何を観察したか、なぜそうなるかは残り、相手が特定される要素だけが落ちます。一方で、持っていない事実を作るのは加工ではありません。

提案書や議事録のように、自社の方法論と相手の機密が同居している資料もあります。この場合、自社で線を引く単位は、フォルダではなく中身になります。採録するのは自社の方法論と一般化できる知見です。相手企業の社名や実数、内部の事情、提案先は落とします。

線引きで迷ったときは、外に出さない側に倒します。判断がつかない状態で出したものは、あとから取り消せません。

▶ 守秘を保ったまま生成AIに引用される記事を作る設計は、以下の記事で解説しています。

🔗 生成AIに引用されるBtoB記事の作り方

BtoB特有の壁②|代表性の低い素材をどう使うか

BtoBは母集団が小さく、自社にある事例の数も限られます。軸③で単一事例と判定した素材をどう扱うかが、次の課題になります。

原則として、単一事例の数字は本文で絶対値のまま使いません。自社で計測した実測値であっても同じです。相場から外れて見える数字は、実例であっても読み手に信じてもらえず、記事全体の信頼を下げます。

使い方は2つあります。一つは条件を添えること、もう一つは相対値に変換することです。

相対値に変換するとは、数字そのものを出さずに、変化の向きと幅で書くことを指します。「導入前と比べて2倍近くになった」「他の施策より短い期間で立ち上がった」のように、比較の対象を置いて相対的に表す形です。読み手が知りたいのは絶対値そのものではなく、どの程度の変化が見込めるかであることが多いため、この形でも判断の材料になります。

変換するときは、何と比べたのかを必ず添えます。「2倍」だけでは、何が2倍なのか分かりません。比較の対象が曖昧な相対値は、絶対値より誤解を招きかねません。

条件を添えるほうは、数字を出したうえで成立する範囲を明示する方法です。ここで注意したいのが、条件を添えたつもりで効いていない書き方です。冒頭で「ある案件では」と断ったあと、続く段落を一般論として展開すると、最初の条件は打ち消されます。条件は宣言するだけでなく、その後の文まで条件つきで書ききる必要があります。

もう一つ避けたいのが、件数を膨らませる書き方です。1件で見たことを「複数の案件で」「多くの企業で」と書けば、記事は強く見えます。ただしそれは事実の粒度を落とす作業ではなく、事実を膨らませる作業です。匿名化とは性質の違う行為でしょう。

同じ種類の問題は、数字を使わない文章でも起こりえます。守秘の都合でやむを得ずしていることを「思わぬ利点がある」と書き換えるのは避けます。制約が長所にすり替わってしまうためです。制約は制約として書いたほうが、読み手には誠実に伝わります。

手順どおりやっても起きる失敗

ここまでの手順を守っても、次の4つは起こります。準備の段階で意識しておくと防げます。

仕分けたのに渡し方が雑になる。 4つの軸で分けたところで力尽きて、まとめて貼り付けてしまう例です。仕分けの結果は渡し方に反映して初めて効きます。判定した内容を1件ずつ書き添える手間を惜しむと、前の工程がまるごと無駄になりかねません。防ぐには、仕分けと渡し方の準備を続けて行い、間を空けないことです。

匿名化しすぎて独自性が消える。 社名と実数を落とすうちに、条件や背景まで落ちてしまうと、残るのは一般論です。落とすのは相手が特定される要素だけで、なぜそうなるかの説明は残します。判断に迷ったら、落としたあとの文を読み返してみてください。どの会社でも書ける内容になっていたら、落としすぎです

確からしさだけ見て、古い素材を通す。 自社の実測データだから確かだと判断し、いつのものかを見落とす例です。実測であっても、期間が空いていれば現在も同じとは限りません。とくに外部の環境が変わりやすい分野では、1年前の観察が現在も成り立つとは言えないでしょう。素材に日付を書く習慣があれば、この見落としは減ります。

条件を添えたつもりで効いていない。 前の章で触れたとおり、宣言だけでは条件は保持されません。書き上がったあとに、条件の外まで話が広がっていないかを読み直します。確かめ方は単純で、条件を書いた一文を隠して読んでみることです。隠しても文意が通ってしまうなら、その条件は効いていません

まとめ|洗い出し、仕分け、渡し方をそろえる

生成AIに任せた記事が一般論になるのは、渡す素材が足りないからです。準備の工程は3段階に分かれます。

  1. 洗い出す:運用の記録、人の中にある観察、失敗と差し戻しの記録の3層を探す
  2. 仕分ける:出所、確からしさ、代表性、社外に出せる範囲の4つの軸で一件ずつ判定する
  3. 渡し方をそろえる:生データではなく、事実と条件と使ってよい範囲を3点セットにして渡す

次のアクション

  • 直近の運用記録から、外に出せそうな事実を3件書き出してみる
  • その3件について、4つの軸で判定してみる
  • 判定できない項目があれば、誰に聞けば分かるかを決める

準備が整えば、構成づくりの段階でも素材を名指しできるようになります。

▶ 集めた素材をもとに構成案を組み立てる手順は、以下の記事で解説しています。

🔗 生成AIを使った記事構成案の作り方

▶ 生成AI時代の検索での見え方は、以下の記事で全体を整理しています。

🔗 BtoB企業のAIO対策ガイド

一次情報の整理からの記事制作支援

当社フラグアウトでは、BtoB企業のコンテンツ制作を、素材の整理から支援しています。次のようなお悩みをお持ちの方に向いています。

  • 生成AIで記事を作ってみたが、一般論から抜け出せない
  • 社内に素材がある気はするが、どこにあるか分からない
  • 守秘があって、事例をそのまま書けない
  • 事例の数が少なく、書けることが限られている
  • 記事の品質を、担当者の力量に頼らず一定にしたい

素材の洗い出しから、公開可否の判定、記事化までを一貫してお引き受けします。まずは現状をお聞かせください。

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BtoB記事の生成AI活用におけるよくある質問

Q
一次情報がまったくない状態でも、記事は作れますか。
Q
集めた素材は、どのくらいの量が必要ですか。
Q
仕分けの4つの軸は、毎回すべて判定する必要がありますか。
Q
守秘の判断は、誰がすればよいですか。
Q
生成AIに社内資料をそのまま読ませてはいけませんか。
Q
準備にどのくらい時間をかけるべきですか。