生成AIで書いた記事の出典を確かめ、問題ないと判断して公開する。そのあとで、事実と違う記述が読者から指摘される。出典まで見たはずなのに、なぜ残ってしまうのか。
理由は、事実と違う記述が生まれる場所が1か所ではないからです。AIが文章を書く瞬間だけを疑っても、ほかの場所で混じったものは残ったままです。この記事では、事実と違う記述が生まれる3つの場所を示します。それぞれをどう確かめるかを、5つの手順に整理します。いずれも当社の制作現場で実際に回している手順です。
この記事でわかること
- ファクトチェックが「AIの作り話を探すこと」だけでは足りない理由
- 事実と違う記述が生まれる3つの場所と、その見分け方
- 疑わしい記述の洗い出しから断定の範囲まで、5つの確認手順
- 経験談や実例が最後まで残りやすい理由
- 裏が取れなかった記述の扱い方
AI記事のファクトチェックとは
ファクトチェックとは、作り話を探すことではなく、書かれた事実がどこで現実とずれうるかを場所ごとに確かめる作業です。
AIが事実でないことを書く、と聞くと、もっともらしい嘘を作り出す場面を思い浮かべがちです。ところが実際に記事へ残る誤りは、そうした作り話ばかりではありません。渡した素材は正しいのに条件が抜け落ちる、本文を直したのに別の場所に古い記述が残る。こうした誤りには、書いた側の意図はありません。だからこそ、意図を疑うのではなく、ずれが起きる場所を順に見ていく必要があります。当社ではまず、記事内の主張を「外部のデータ」「自社の事例の数値」「一般的な仕組みの説明」に分けてから照合します。分類が違えば、確かめ方も変わるためです。
▶ 公開前に見る観点の全体像は、以下の記事で解説しています。
事実と違う記述が生まれる3つの場所
事実と違う記述は、3つの場所(混入点)で生まれます。生成のとき、条件が抜けるとき、修正のときの3つです。
どこで生まれたかによって、確かめ方が変わります。3つを分けておくと、1か所を見て安心してしまう事態を防げます。

混入点① 生成時の作り話
1つ目は、AIが文章を作る瞬間に生まれる作り話です。
もっともらしい形で、AIは実在しない固有名詞や数字、存在しない出典を作り出します。ここにAIの意図はありません。学習した言葉のつながりから、それらしい形を組み立てているだけです。見た目が自然なので、書いた本人でも見落とします。固有名詞と数字と出典は、生成された記事では最初に疑う対象になります。
混入点② 条件の脱落
2つ目は、渡した素材は正しいのに、条件だけが抜け落ちる誤りです。
たとえば「特定の条件下で有効」という調査結果が、本文では「有効」と条件なしで言い切られる。目安として示された推定値が、断定として書かれる。素材そのものは正しいため、出典を見ても間違いは見つかりません。抜けたのは条件のほうです。この誤りは、入力が正しくても起きます。原典が目安や推定であるなら、本文も「〜とされます」という言い方になっているかを確かめます。
▶ 素材の準備は、以下の記事で解説しています。
混入点③ 修正時の不整合
3つ目は、記事を直したときに、直し残しから生まれる食い違いです。
本文の数字を直したのに、まとめや質問への回答には古い数字が残る。同じ記事の中で、同じ事実に別の数字が並ぶわけです。とくに質問への回答は、その部分だけを抜き出して引用されやすいため、ここに古い記述が残ると影響が大きくなります。本文を直したら、まとめの箇条書き・質問への回答の全問・締めの行動提案・末尾のメモまで機械的に洗います。
手順|5つのステップ
確認は、5つの手順を順に踏むと漏れが減ります。疑わしい記述の洗い出し・出典の照合・数値の再計算・経験談の裏取り・断定の範囲の5つです。
全文を等しく見ようとすると、注意が散ります。疑わしいものを先に絞り、そこから順に確かめる形にします。

① 疑わしい記述を先に洗い出す
最初に、裏付けが存在しない可能性が高い記述を先に挙げます。
全文を頭から均等に確かめると、時間が足りません。当社では、照合を始める前にあやしい記述をトップ10で列挙します。経験談・他との比較・規範を語る主張・決まり文句を優先して疑うのが基本です。ここで挙げた10件は、あとの手順で必ず一件ずつ照合します。挙げただけで終わらせないことが要点です。
② 出典を照合する
次に、外部のデータを原典に当たって確かめます。
調査した主体、発表した年、数値が正確か。共同の調査なら、両者の名前が入っているか。加えて確かめたいのが、出典の新しさです。公開から1年以上たった出典に頼る主張は、今の版でもその方針が続いているかを確認します。方針が変わっていれば、本文を今の版に合わせて直し、最新の版を主な出典にするのが原則です。古い出典をそのまま引くと、すでに変わった内容を事実として広げることになります。
▶ 出典の示し方は、以下の記事で解説しています。
③ 数値を再計算する
三番目に、記事の数値を自分で計算し直します。
まず確かめるのは、すべての数値が資料と一致しているかどうかです。増減の割合は、元の数字から計算し直します。とくに注意したいのが、割合の分母です。「商談化率26%」とだけ書くと、読者はどの分母に対する割合かを取り違えます。読者が別の分母で計算して合わない数字は、あとで指摘を受ける火種になりかねません。分母を本文に明示しておきます。
④ 経験談の裏付けを取る
四番目に、数値だけでなく、経験を語る記述の裏付けを取ります。
「よく聞かれます」「相談が増えています」といった記述も、すべて拾い出す対象です。これらが記録で裏付けられるかを確かめ、裏付けがなければ削るか、経験を語らない書き方に直します。当社では、あらかじめ用意した素材の記録に引用のない経験や実例は、自動的に直す対象としています。数字がない記述ほど、確かめる仕組みからこぼれやすいためです。
⑤ 断定の範囲を見る
最後に、言い切ってよい範囲を超えていないかを見ます。
数値や固有名詞でなくても、検証できない傾向を事実のように言い切る記述があります。「すぐに見抜かれます」「以前とは変わりました」といった書き方です。これらは、自社の経験だと明示するか、「〜しかねません」「〜と考えられます」といった確度の表現に直します。ただし、その記事が論証と実例で支えている中心の主張は、断定のままで構いません。すべてを曖昧にすると、記事が何も言っていないことになります。
経験談・実例が最後まで残る理由
経験談や実例は、最後まで確認から漏れやすい記述です。数字がないため、ここまでの手順が最初から対象にしていません。
当社が人の最終確認で最初に見るのも、「経験談や実例が実在するか」です。過去には、導入部の「相談が増えました」や書き直しの実例が、実在しないまま書かれていた例もあります。数値なら資料と突き合わせられるでしょう。経験談には突き合わせる相手がなく、書き手の記憶にしか根拠がないことがあります。
読み手の側からも検証しにくいのが、経験談の特徴です。数字なら読者が電卓で確かめられますが、「増えている」という感覚は外からは確かめようがありません。誰にも確かめられないまま、公開後も記事に残り続けます。だからこそ、数字のない記述こそ記録と突き合わせる必要があります。
もう1つ注意したいのが、数字を使わずに実態より良く見せてしまう書き方です。3つの型があります。1件で見たことを「複数の企業で」と書く件数の水増し。制約でやむを得ずしていることを「思わぬ利点がある」と正当化する美化。例外を無視した言い切り。当社でも、匿名化を「利点」と美化し、1件の観察を「複数に共通する傾向」と書いた例がありました。匿名化は、事実の粒度を落とす作業であって、事実を膨らませる作業ではありません。

裏が取れなかった記述をどうするか
裏が取れなかった記述は、削除を既定とします。確実さを最優先するためです。
出典が確認できない数値や主張は、まず削る方向で考えます。残す判断をするのは、削ると論の筋が通らなくなる場合だけです。そのときも、「〜とされます」という言い方に変えたうえで、残すかどうかは人が決めます。あいまいなまま断定で残すより、確度を落として残すか、いっそ削るほうが安全です。
重い直し、つまり数値や主な主張に関わる修正が入ったときは、直したあとにもう一度採点し直します。採点した原稿と、最後に公開する原稿を一致させるためです。軽い直しなら、そこまでは必要ありません。なお、確認する場と直す場は分けます。事実を確かめた人がその場で本文を書き換えると、確かめる目と直す手が同じになり、見落としが増えるためです。差し戻して直す判断そのものは、別の記事で扱います。
▶ 直すか差し戻すかの判断は、以下の記事で解説しています。

まとめ|3つの場所を、5つの手順で確かめる
AI記事のファクトチェックで大事なのは、AIが書く瞬間だけでなく、事実と違う記述が生まれる3つの場所それぞれを確かめることです。要点は次の4つです。
- 生まれる場所を分ける:生成時の作り話、条件の脱落、修正時の不整合
- 手順を順に踏む:疑わしい記述の洗い出し→出典の照合→数値の再計算→経験談の裏取り→断定の範囲
- 数字のない記述を記録と突き合わせる:経験談は最後まで漏れやすい
- 裏が取れなければ削る:残すのは削ると筋が通らない場合に限り、確度を落として残す
次のアクション
- 記事のあやしい記述を10件だけ書き出し、経験談と比較と決まり文句を優先する
- 数値の分母が本文に書かれているか確かめる
- 出典の公開年を見て、1年以上前なら今の版で方針が続いているか確認する
ファクトチェックを通したBtoB記事制作の支援
当社フラグアウトでは、この記事で述べたファクトチェックの手順を自社の制作で使い、見落としが出るたびに手順へ反映しながら記事制作をお引き受けしています。次のようなお悩みをお持ちの方に向いています。
- 生成AIで記事は書けるが、事実の裏取りに手が回らない
- 出典を確かめたのに、公開後に誤りが指摘される
- 経験談や実例の裏付けを、どう取ればよいか決まっていない
- 数値の書き方が担当者によってばらつく
- 記事の正確さを、担当者の力量に頼らず保ちたい
裏付けの取れた記述だけを残す手順は、実際の制作で出た抜けを反映して更新しています。その手順を通した記事を、構成から記事化までお届けします。まずは現状をお聞かせください。
AI記事のファクトチェックにおけるよくある質問
- Q出典を確かめれば、ファクトチェックは足りますか?
- A
出典の照合だけでは足りません。条件の脱落や修正時の食い違いは、出典を見ても見つからないためです。生まれる場所ごとに確かめ方を変える必要があります。詳細は本文「事実と違う記述が生まれる3つの場所」を参照してください。
- Q全文を頭から確かめるのは、非効率ではありませんか?
- A
均等に確かめると時間が足りなくなります。あやしい記述を先に10件ほど絞り、そこから順に照合するほうが漏れが減ります。経験談、比較、決まり文句を優先して疑ってください。
- Q経験談の裏付けは、どう取ればよいですか?
- A
記録と突き合わせます。裏付けがなければ削るか、経験を語らない書き方に直してください。数字がない記述ほど確認から漏れやすいため、意識して拾い出す必要があります。詳細は本文「経験談・実例が最後まで残る理由」を参照してください。
- Q古い出典は、使ってはいけませんか?
- A
使えますが、今の版でも方針が続いているかを確認してください。公開から1年以上たった出典は、現行の版を主な出典にし、初出は併記します。方針が変わっていれば、本文を今の版に合わせて直します。
- Q裏が取れない数値は、必ず削るべきですか?
- A
削除を既定とします。残すのは、削ると論の筋が通らなくなる場合に限ります。そのときも「〜とされます」と確度を落とし、残すかどうかは人が判断してください。詳細は本文「裏が取れなかった記述をどうするか」を参照してください。
- Q数値を使わなければ、誇張にはなりませんか?
- A
数値がなくても、実態より良く見せてしまう書き方があります。1件を複数のように書く、制約を利点と言い換える、例外を無視して言い切る。この3つは数値を伴わなくても起きるため、注意が必要です。
