この記事でわかること

  • BtoB商材ブランディングの定義と、BtoBの「商材→会社」検討フローにおけるブランディングの役割
  • 生成AI時代に商材ブランドの根拠が「イメージ」から「ファクト」に変わった理由
  • 商材ブランドの土台を定義する4つの問いと3ステップの進め方
  • 3つの軸(商材を知らせる→価値を証明する→想起させ続ける)と各軸で「何を伝えるか」
  • ブランド基盤の3分類(コンテンツ資産・デリバリーチャネル・受け皿)による施策の組み立て方
  • 自社の「詰まり」を診断する3パターンとフェーズ別の優先施策
  • KPI(重要業績評価指標)の5段階階層構造(実行→接触→信頼→想起→事業成果)
  • 商材ブランドと企業ブランドの関係
目次
  1. BtoB商材ブランディングとは
    1. BtoBの検討フローとブランディングの役割
    2. セールスマーケティングとの違い
  2. 生成AI時代、商材ブランディングの前提が変わった
    1. AIに聞いても出てこない商材は検討候補に入らない
    2. 情報が均質化し「機能の説明」では差がつかなくなった
    3. 商材ブランドの根拠が「イメージ」から「ファクト」に変わった
    4. BtoB購買の比較検討では実績への信頼が最終判断を左右する
  3. 商材ブランドの土台を定義する
    1. なぜ土台から始めるのか
    2. 土台を構成する4つの問い
    3. よくある誤解:「サービスサイトを作ればブランディングになる」
    4. 土台を定義する3ステップ
    5. 土台は「社内で合意する」ことが重要
    6. 土台は変わってもよい
  4. BtoB商材ブランディングの3つの軸
    1. 第1の軸:商材を知らせる——「何を解決するサービスか」を届ける
    2. 第2の軸:価値を証明する——「成果データで信頼を作る」
    3. 第3の軸:想起させ続ける——「一貫したアプローチを繰り返し伝える」
  5. 商材ブランディング施策の全体像
    1. ブランド基盤の3分類 ─ 施策を「どう組み立てるか」
    2. セールスマーケティングとの目的の違い
    3. 商材ブランディング施策一覧と各施策が生むファクト
  6. 始め方:自社の診断とフェーズ別の進め方
    1. 3つの詰まりパターン
    2. フェーズ別の優先施策
    3. 効果測定:KPIの5段階階層構造
  7. ファクトを蓄積するための実務ポイント
    1. 「残す」ための4つのアクション
    2. 事例公開の実務ハードルを越える方法
  8. 商材ブランドと企業ブランドの関係
    1. 商材ブランドが入り口、企業ブランドが後押し
    2. 企業ブランドは商材ブランディングの活動から自然に蓄積される
    3. 商材ブランディングに本腰を入れるタイミングの判断基準
  9. まとめ
  10. 記事を読み終えたあとの次のアクション
  11. フラグアウトのBtoB商材ブランディング支援
  12. BtoB商材ブランディングに関するよくある質問

BtoB商材ブランディングとは

BtoB商材ブランディングとは、自社のサービスや製品がターゲットに検討される際に「○○ならこのサービス」と想起される状態を作る活動です。ロゴやサービスサイトのデザインを整えることだけがブランディングではありません。商材の価値と実績を継続的に蓄積し、比較検討の場で指名で選ばれる状態を目指す取り組みの全体を指します。

BtoB企業の事業企画担当やマーケティング責任者から、次のような課題を聞くことが増えています。

課題状態
広告費は増えるが指名検索が増えない認知は取れても、比較検討の場で想起されない
コンテンツを作っても比較時に思い出されない接点はあるが、記憶に残っていない
問い合わせは来るが「指名相談」にならないサービス名を知った上での相談ではなく、比較の1社として扱われている
施策をバラバラに実行しても成果が蓄積されない個別施策は動いているが、全体として積み上がっていない

これらは施策の量が足りないのではなく、施策が「商材ブランド」として積み上がる設計になっていないことが原因です。

BtoBの検討フローとブランディングの役割

BtoB商材の検討フローは「商材を探す→候補を比較する→会社を確認する→問い合わせる」という順序で進みます。

フェーズターゲットの行動ブランディングの役割
商材を探す「SNS広告 運用代行」等で検索、AIに質問検討候補に入る(想起される)
候補を比較する3〜5社のサービスを比較検討「このサービスは成果を出している」と認識される
会社を確認する企業のWebサイトや実績を確認「この会社なら信頼できる」と判断される
問い合わせる資料請求・問い合わせ指名で問い合わせが来る

商材ブランディングは主に最初の2つのフェーズ(検討候補に入る+比較で選ばれる)を強化する活動です。3つ目のフェーズ(会社の信頼)は企業ブランドの領域であり、後段で解説します。

BtoB商材の検討フロー4段階(商材を探す→候補を比較→会社を確認→問い合わせ)と、商材ブランド・企業ブランドがそれぞれ効く範囲を色分けで示した図

セールスマーケティングとの違い

セールスマーケティング商材ブランディング
目的見込み顧客(リード)を獲得し商談・受注につなげる「○○ならこのサービス」と想起される状態を作る
時間軸短期〜中期(今月・来月の商談数)中長期(半年〜数年で蓄積)
主なKPIリード数・商談数・受注数・獲得コストサービス名の指名検索数・比較検討時の想起率・紹介率
成果の性質施策を止めると成果も止まる蓄積型。続けるほど資産になる

セールスマーケティングと商材ブランディングは切り離せません。ブランディングでサービス名が知られていると、広告のクリック率が上がりリード獲得コストが下がります。逆に、セールスマーケティングで公開した導入事例やウェビナー登壇の実績が、そのまま商材ブランドの蓄積になります。

生成AI時代、商材ブランディングの前提が変わった

ブランドの根拠は「イメージ」から「ファクト(実績や事例などの事実情報)」に移りつつあります。2026年現在、BtoB商材のブランディングは以前とは異なるルールで動いています。特に影響が大きいのは以下の4点です。

AIに聞いても出てこない商材は検討候補に入らない

BtoBの担当者がAIに「○○業界のSNS広告運用に強い会社は?」と質問したとき、AIが参照するのはWeb上に存在する情報です。自社のサービスに関する情報がWeb上に十分に蓄積されていなければ、AIの回答にサービス名は含まれず、検討候補にすら入りません。

AIが回答を生成する際に参照する情報には、自社サイトのサービスページや事例コンテンツだけでなく、第三者メディアからの言及や比較記事での紹介も含まれます。自社が発信する情報だけでは不十分であり、外部からの評価や言及をどう増やすかもブランディングの設計対象です。

▶ AIに引用されるための具体的な対策は、以下の記事で解説しています。

情報が均質化し「機能の説明」では差がつかなくなった

AIが一般的な機能説明を即座に生成できるようになり、「どのサービスも同じことを言っている」状態が加速しています。「○○機能搭載」「△△に対応」といった機能訴求だけでは差別化が難しくなりつつあります。

差がつくのは「どんな機能があるか」ではなく「そのサービスを使って具体的にどんな成果が出たか」です。

商材ブランドの根拠が「イメージ」から「ファクト」に変わった

従来の商材ブランディングでは、洗練されたサービスサイトや印象的なキャッチコピーで「イメージ」を作ることが重視されてきました。しかしAIが参照するのは「きれいなサイトがあるサービス」ではなく「Web上に具体的な実績データや事例が蓄積されているサービス」です。

BtoB購買の比較検討では実績への信頼が最終判断を左右する

機能や価格が同等のサービスが複数ある場合、最終的な判断基準は「このサービスは本当に成果を出しているのか」という実績への信頼です。この信頼は1本の広告では作れません。事例コンテンツやウェビナーでの実績共有など、複数の接点を通じて蓄積されるものです。

商材ブランドの土台を定義する

施策を始める前に「このサービスは誰のどんな課題をどう解決するのか」を1文で言える状態にすることが最優先です。

なぜ土台から始めるのか

BtoB企業のブランディング支援に携わるなかで、最初にSNS運用や事例制作から着手するケースをよく見ます。しかし「誰に・何を・なぜ自社が」が定まっていない状態で施策を始めると、投稿テーマが毎回ばらつき、事例の切り口もぶれていく。結果として、3ヶ月で「何を発信すればいいかわからない」と止まるパターンが繰り返されます。

施策の前に土台を定義する。この順序を間違えると、施策は動いているのにブランドとしては何も積み上がらない状態が続きます。

土台を構成する4つの問い

土台は以下の4つの問いで構成されます。

問い定義すること
誰のターゲットは誰かBtoB企業の事業企画担当・マーケティング責任者
どんな課題をどんな課題を解決するサービスか商談につながるリードが足りない/SNS広告を始めたいが社内にノウハウがない
どう解決するかサービスの提供価値は何かターゲット設計から配信・レポーティングまで一気通貫のSNS広告運用支援
なぜこのサービスか競合サービスとの違いは何かBtoB商材に特化した運用実績100社以上/自社もBtoB事業を運営している当事者視点

よくある誤解:「サービスサイトを作ればブランディングになる」

BtoB企業の商材ブランディングでよく見る誤解が「サービスサイトをリニューアルすればブランディングになる」というものです。サービスサイトはブランディングの一部ですが、土台が定まっていない状態でサイトだけ作っても「きれいだが他との違いがわからない」という状態になります。

もう1つ多い誤解は「SNSで商材の宣伝を繰り返せばブランディングになる」というケースです。機能紹介や料金訴求の投稿を繰り返しても「このサービスでどんな成果が出るのか」が伝わらなければ、比較検討の場で想起されません。

土台を定義する3ステップ

ステップ1:競合サービスを5つリストアップする

ターゲットが自社サービスと比較検討しうるサービスを5つ程度リストアップします。各サービスのWebサイト・事例ページ・料金ページを確認し、「何を強みとして打ち出しているか」を整理します。

ステップ2:「選ばれた理由」を棚卸しする

営業担当に「顧客がなぜ自社サービスを選んだか」「競合と比較して何が決め手だったか」をヒアリングします。経営者が考える強みと顧客が感じている価値がずれていることは珍しくありません。複数の顧客の「選んだ理由」を集めることで、サービスの本当の差別化ポイントが見えてきます。

ステップ3:自社の立ち位置を1文で書く

「(ターゲット)の(課題)を(サービスの強み)で解決するサービス」という1文に落とします。この1文がすべての施策の設計指針になります。

例:「BtoB企業のリード獲得課題を、BtoB特化のSNS広告運用ノウハウで解決するサービス」

この1文が書けない場合は、ステップ1・2の深掘りが足りていない可能性があります。完璧な1文を目指す必要はなく、まず仮で決めて施策を回しながら修正していくアプローチで構いません。

土台は「社内で合意する」ことが重要

4つの問いの答えは、マーケティング担当・営業・顧客対応担当など顧客接点を持つメンバーと共有し、社内で合意しておくことが重要です。土台が社内で共有されていれば、サービスサイトの訴求・事例コンテンツの構成・ウェビナーのテーマ設計など、すべての施策で伝えるメッセージに一貫性が生まれます。

土台は変わってもよい

土台は一度決めたら固定するものではありません。サービスの機能追加やターゲットの変化に応じて、半年〜1年に一度見直すことを推奨します。ただし頻繁に変えすぎるとブランドの蓄積が途切れるため、「変えるべきもの(機能訴求)」と「一貫して守るもの(提供価値の軸)」を意識的に分けることが大切です。

BtoB商材ブランディングの3つの軸

商材ブランドは「商材を知らせる→価値を証明する→想起させ続ける」の3軸を循環させることで蓄積されます。土台を定義したら、その土台の上で3つの軸を回していきます。

各軸には「どう届けるか(施策)」だけでなく「何を伝えるか(メッセージ)」の設計が必要です。施策だけ回しても伝える内容が定まっていなければ、ターゲットから見て「何のサービスかわからない」まま終わります。

名称何を伝えるかどう届けるか生まれるファクト
第1の軸商材を知らせるこのサービスが何を解決するか、どの領域に強いかSNS広告、カンファレンス、業界メディアリーチ数・認知率の変化
第2の軸価値を証明するこのサービスを使うとどんな成果が出るか事例コンテンツ、ウェビナー、ホワイトペーパー導入事例数・成果数値・登壇実績
第3の軸想起させ続けるこのサービスの考え方・アプローチが一貫していることSNS運用、ニュースレター、コラムフォロワー数・指名検索数の推移
商材ブランディングの3つの軸(商材を知らせる→価値を証明する→想起させ続ける)が循環し、想起から紹介・指名検索が生まれて新たな接点に戻る循環図

第1の軸:商材を知らせる——「何を解決するサービスか」を届ける

ターゲットにサービスの存在を知ってもらうフェーズです。この段階で伝えるべきは「このサービスは○○の課題を解決するものです」という市場での立ち位置です。

BtoB購買者の73%が意思決定プロセスでウェビナーやイベントを参考にしているというデータがあります(出典:Forrester(旧SiriusDecisions))。ウェビナーやカンファレンスは「知らせる」軸において、SNS広告と並ぶ重要な接点創出手段です。

知らせ方で差がつくポイント:

カンファレンスに登壇する場合、登壇テーマの設計が重要です。「BtoBマーケティングの最新トレンド」のような総論テーマでは「どの会社でも話せる内容」になり、サービスの存在が記憶に残りません。「BtoB企業がSNS広告で獲得コスト(CPA)を半分にした3つの設計変更」のように、自社サービスの専門領域と実績に紐づいたテーマにすることで「この課題にはこのサービスが強い」という認知が生まれます。

SNS広告の場合も同様です。「マーケティング支援なら○○」という抽象的な広告素材よりも、「BtoB企業のウェビナー集客で商談化率20%を実現」のように具体的な成果を含む広告素材の方が、比較検討の場で想起される確率が上がります。

▶ カンファレンスやイベントの集客戦略は、以下の記事で解説しています。

▶ イベントを軸にしたブランディングの設計と開催実例は、以下の記事で解説しています。

https://flagout.co.jp/event-branding

第2の軸:価値を証明する——「成果データで信頼を作る」

サービスの存在を知ったターゲットに、「このサービスは本当に成果を出せるのか」を理解してもらうフェーズです。ここで伝えるべきは「具体的な導入実績と成果データ」です。

フォローされなかったリードの80%は、2年以内に競合から購入するとされています(出典:Forrester(旧SiriusDecisions))。接点を作った後に「価値を証明する」コンテンツでフォローしなければ、せっかくの接点が競合への流出につながります。

「SNS広告運用を支援しています」だけでは信頼は生まれません。「CPA56%改善」「3ヶ月で受注2件」「商談化率26%」といった具体的な数値が、ターゲットの「このサービスに任せて大丈夫か?」という疑問に答えます。

「価値を証明する」施策でよくある失敗:

ウェビナーのテーマ設計で「業界の一般的なノウハウ」を話してしまうケースです。「SNS広告の基礎」を解説するウェビナーは参加者を集めやすいですが、「このサービスの価値」は伝わりません。「自社サービスを使って実際にどう運用し、どんな成果が出たか」を含むテーマにすることで、初めて「このサービスに頼みたい」という信頼につながります。

事例コンテンツも「お客様の声」だけでは弱いです。「課題→サービスでどう解決したか→成果数値→成功要因」の構成で書き、特に成果数値を具体的に記載することでファクトとしての価値が高まります。

比較検討で候補に残るための「検討3点セット」:

BtoB商材の比較検討で候補に残るためには、以下の3つのコンテンツを整備しておくことが効果的です。

コンテンツ役割ターゲットの判断基準
導入事例顧客の課題・決め手・成果を具体的に提示し安心感を提供する「同じ業種で成果を出した実績があるか」
比較表競合サービスとの違いを客観的に整理し、稟議で使える判断材料にする「他社と何が違うのか」
導入ガイド導入ステップと期間を明示し、検討のハードルを下げる「導入したら何がどう変わるのか」

この3つが揃っていると、ターゲットが社内で稟議を通す際の材料になります。BtoB商材は購買者1人では決められません。検討3点セットは「検討者が社内の意思決定者を説得するための武器」でもあります。

第3の軸:想起させ続ける——「一貫したアプローチを繰り返し伝える」

サービスの価値を理解したターゲットに、「○○の課題が出たらまずこのサービスに相談しよう」と想起される状態を作るフェーズです。ここで伝えるべきは「サービスの考え方やアプローチの一貫性」です。

単発の事例紹介ではなく、SNSやニュースレターで継続的に発信する「アプローチの一貫性」が想起につながります。「BtoB広告はターゲット設計が8割だと言い続けているサービス」「データに基づいた改善サイクルを重視しているサービス」——こうしたアプローチの繰り返しが記憶に残ります。

想起されるSNS発信の具体例:

サービスの宣伝や料金の訴求を繰り返すだけでは「想起させ続ける」効果は薄いです。BtoB商材のSNS発信で記憶に残るのは「このサービスはどういう考え方で運用しているのか」が伝わる投稿です。たとえば業界の最新動向に対して「この変化に対して当社のサービスでは○○のアプローチで対応しています」のように、サービスの姿勢を添える投稿を繰り返すことで想起が蓄積されます。

3軸の循環この3つの軸は一方通行ではなく循環します。まず商材を知らせ、次に価値を証明し、そして想起させ続ける。想起された状態から「紹介」や「指名検索」が生まれ、新たなターゲットへの接点になります。

商材ブランディング施策の全体像

BtoB商材ブランディングは「土台の定義→3軸の循環→ファクトの蓄積」という構造で成り立ちます。施策は3軸のいずれかに位置づけられ、各施策が生み出すファクトが次の循環の起点になります。

全体構造

内容役割
土台誰の・どんな課題を・どう解決する・なぜこのサービスかすべての施策の設計指針。ここがぶれると施策のメッセージがばらつく
3軸×What商材を知らせる(ポジション)→価値を証明する(ファクト)→想起させ続ける(アプローチ)土台で定義した「このサービスの価値」を、段階を追って届ける仕組み
施策各軸に紐づく具体的な施策(下記一覧)3軸の「What」を届ける手段。オンライン×オフラインで設計
ファクト各施策が生み出す事実情報商材ブランドの蓄積そのもの。Web上に残ることで次の循環の起点になる

たとえば「導入事例を公開する(施策)→成果数値がWeb上に残る(ファクト)→AIがサービスを回答に含めるようになる→指名検索が増える(新たな接点)」という循環が回ります。

商材ブランディングの全体構造図(土台→3軸→施策→ファクトの4層ピラミッドと、ファクトが次の循環の起点に戻る矢印)

ブランド基盤の3分類 ─ 施策を「どう組み立てるか」

前述の3軸は「ターゲットにどんな順序でメッセージを届けるか」の設計です。一方で3分類は「手持ちの施策をどんな役割で整理するか」の切り口です。3軸がメッセージの段階設計なら、3分類は施策の役割分類と考えてください。

分類役割代表例
コンテンツ資産何を伝えるか。ブランドのファクトとして蓄積される素材導入事例、ウェビナー登壇、コラム記事、独自調査レポート、経営者のnote
デリバリーチャネル(届ける手段)どこで届けるか。コンテンツ資産をターゲットに届ける手段SNS広告、LinkedIn企業ページ、PR Times、カンファレンス、共催セミナー
受け皿・信頼形成基盤見られた後にどう信頼を深めるか。接触後に「相談してよさそう」と判断される基盤サービスサイト、実績ページ、問い合わせ導線、LinkedIn企業ページ
ブランド基盤の3分類(コンテンツ資産=何を伝えるか/デリバリーチャネル=どこで届けるか/受け皿=どう信頼を深めるか)を3つのボックスと流れで示した図

3分類で整理する理由:

BtoB企業のブランディング支援に携わるなかで多い課題が「チャネル過多による分散」です。SNS・ブログ・note・YouTube・イベントなど複数のチャネルを運用しているが、それぞれの役割が曖昧で運用負荷だけが増えているケースは珍しくありません。

3分類で整理すると「コンテンツ資産が足りないのか」「デリバリーが弱いのか」「受け皿が整備できていないのか」が明確になり、どこに投資すべきかの判断がつきやすくなります。

よくある失敗:受け皿なしでデリバリーだけ強化する

SNS広告やカンファレンスで接点を作っても、接触後にサービスサイトを訪問したターゲットが「何に強い会社かわからない」「実績が見えない」と感じれば離脱します。デリバリーを強化する前に、受け皿(サービスサイトの訴求・実績ページ・問い合わせ導線)を整備しておくことが重要です。

▶ サービスサイト(LP)の設計方法は、以下の記事で解説しています。

セールスマーケティングとの目的の違い

ブランディングとセールスマーケティングの概要比較は前述のとおりですが、施策レベルで見ると「同じ施策なのに目的が違う」ことがわかります。

施策セールスマーケティングでの目的商材ブランディングでの目的
サービスサイトリード獲得の成果地点(問い合わせ・資料請求)「○○ならこのサービス」という認知を形成する資産
導入事例商談を後押しする営業資料成果のファクトを蓄積し、信頼を積み上げる資産
ウェビナー・カンファレンスリード獲得施策サービスの専門性を業界内で確立する手段
ホワイトペーパーCV(コンバージョン:成果地点)獲得用コンテンツ(ダウンロード数がKPI)サービスの専門性の証明(引用・シェアがKPI)
SNSアカウント運用リード獲得の導線サービスのアプローチを想起させ続ける資産
コンテンツSEO(検索対策)検索流入の獲得「このサービスの記事は信頼できる」という認知形成

商材ブランディング施策一覧と各施策が生むファクト

3つの軸区分施策生まれるファクト
商材を知らせるオンラインSNS広告リーチ数・認知率の変化
ディスプレイ広告・業界メディア広告メディア掲載実績
プレスリリース配信第三者メディアからの言及件数
比較記事・ランキング記事への掲載掲載メディア数・掲載順位
オフラインカンファレンス・共催イベント開催実績・参加者数・共催パートナー数
業界団体・カンファレンスへの登壇登壇実績・イベント名
展示会出展来場者接触数・名刺獲得数
価値を証明するオンライン導入事例・ケーススタディ具体的な成果数値(CPA・商談数等)
ウェビナー・オンラインセミナー登壇テーマ・参加者数・満足度
ホワイトペーパー・独自調査レポートダウンロード数・引用件数・シェア数
サービス比較コンテンツ記事数・検索順位
コンテンツSEO(自社コラム)記事数・検索順位・被リンク数
オフラインオフラインセミナー・勉強会開催実績・参加者数
想起させ続けるオンラインSNS企業アカウント運用フォロワー数・反応率の推移
経営者・担当者の個人SNS発信フォロワー数・投稿のリーチ・反応率
ニュースレター(定期配信)購読者数・開封率の推移
コミュニティ運営参加者数・アクティブ率
オフラインユーザー会・顧客交流イベント参加者数・リピート参加率

施策一覧のすべてに取り組む必要はありません。自社サービスの土台(誰の・どんな課題を・どう解決するか)と現在の予算や人員を踏まえて、まずは各軸から1〜2施策を選び、小さく始めてファクトを蓄積することが重要です。

▶ 共催セミナーの始め方とメリット・デメリットは、以下の記事で解説しています。

▶ SNS広告を含むBtoB広告の戦略設計は、以下の記事で解説しています。

始め方:自社の診断とフェーズ別の進め方

商材ブランディングは「どこが詰まっているか」を診断し、自社のフェーズに合った施策から小さく始めるのが現実的です。

3つの詰まりパターン

まず自社サービスが「どこで詰まっているか」を診断することが起点になります。

パターン状態優先すべき軸
認知の詰まりそもそも市場に接点が少なく、検討の土俵に上がれていない第1の軸(商材を知らせる)
理解の詰まりリードは取れるが理解が浅く、相談・検討に進まない第2の軸(価値を証明する)
想起の詰まり一度は接触したが忘れられ、比較検討時に候補に入らない第3の軸(想起させ続ける)
3つの詰まりパターン診断チャート(認知の詰まり・理解の詰まり・想起の詰まりから、優先すべき軸へ矢印で誘導)

自社がどのパターンに当てはまるかで、最初に投資すべき軸と施策が変わります。以下のフェーズ別ガイドと合わせて判断してください。

フェーズ別の優先施策

フェーズ状態優先施策(各軸1〜2つ)体制の目安
始める期(〜6ヶ月)セールスマーケティングの型が一通りできた段階知らせる:経営者の個人SNS発信。証明する:導入事例の公開。想起:公式SNSの定期投稿(週2〜3回)追加予算をかけず内製中心で回す
拡大期(6ヶ月〜2年)ファクトが蓄積され始め、指名検索や紹介が少しずつ増えてきた段階知らせる:ウェビナー・カンファレンスへの登壇。証明する:独自データの発信、比較コンテンツの拡充。想起:ニュースレターの開始一部外注やツール導入も検討する
成熟期(2年〜)業界内でサービスの認知を獲得し、ブランド投資を本格化する段階知らせる:OOH広告(タクシー・交通・屋外)、スポンサーシップ。証明する:独自調査レポート。想起:コミュニティ運営ブランド専任担当の配置や外部支援の本格活用を検討する

始める期でよくある失敗:

「ブランディングを始めよう」と決めた直後にOOH広告(タクシー・交通・屋外広告)を検討するケースがあります。しかしファクト(導入事例・成果データ)の蓄積がない状態でOOH広告を打っても「名前は見たことがあるがどんなサービスかわからない」で終わります。まずは「価値を証明する」軸のファクトを蓄積してから「商材を知らせる」軸を拡大する順序が効率的です。

▶ SNSアカウント運用の始め方と運用設計は、以下の記事で解説しています。

▶ ホワイトペーパーの企画・制作方法は、以下の記事で解説しています。

効果測定:KPIの5段階階層構造

施策を始めたら「何を計測するか」を決める必要があります。商材ブランディングのKPIは「実行→接触→信頼→想起→事業成果」の5段階構造です。まず下位のKPIを動かせば、上位のKPIが動き始めます。

階層KPIの種類指標例計測頻度
⑤ 事業成果事業KPI指名相談数・商談化率・競合比較での勝率・紹介経由の受注数四半期
④ 想起想起KPIサービス名の指名検索数・純粋想起率(候補を見せずに想起されるか)・助成想起率(候補を見せて想起されるか)・AI検索での露出月次〜半期
③ 信頼形成信頼KPI導入事例の閲覧数・登壇視聴数・資料ダウンロード数・経営者への講演依頼数月次
② 接触接触KPI投稿の表示回数・サービスページ閲覧数・イベント申込数・動画視聴数月次
① 実行活動KPI投稿数・事例公開数・ウェビナー開催数・コラム公開数週次〜月次
KPIの5段階階層ピラミッド(下から実行→接触→信頼→想起→事業成果。下位を動かすと上位が動く矢印付き)

始める期は①活動KPIと②接触KPIを中心に追い、③信頼KPIの数値が動き始めたことを確認してから④想起の変化を見ます。「指名検索数が増えない」と焦る前に、下位KPIが回っているかを確認しましょう。

④想起KPIのうち「純粋想起率」「助成想起率」は、ターゲット層へのアンケート調査で計測します。初回調査で現状を把握し、1年後に再実施してBefore/Afterで比較する設計が効果的です。

ファクトを蓄積するための実務ポイント

ブランドの蓄積は「ファクトをWeb上に残す」ことで進みます。多くの企業はすでにファクトの素材を持っていますが、公開されずに社内に埋もれています。

「残す」ための4つのアクション

アクション具体的にやること
導入事例を公開する顧客の許可を得てサービスの導入事例を自社サイトに掲載する。成果数値を含めるほどファクトとしての価値が高まる
登壇を記事化するウェビナーやカンファレンスの登壇内容をコラム記事として公開する。登壇は一過性だが記事にすれば検索対象になる
独自データを発信するサービスの運用を通じて蓄積されるデータ(業界別の傾向や効果検証の結果等)をレポートやコラムとして公開する
第三者からの言及を増やすプレスリリースの配信、業界メディアへの寄稿、共催イベントでのパートナー企業からの紹介を通じてサービスへの言及を増やす

事例公開の実務ハードルを越える方法

「導入事例を公開したいが顧客の許可が取れない」「まだ事例が少なくて公開できるものがない」——ファクトの蓄積でつまずきやすいのが事例公開のハードルです。よくある3つのハードルと対策を整理します。

ハードル対策ポイント
守秘義務で社名を出せない社名を伏せて「業種×課題×成果数値」の3点を公開する例:「製造業向けITソリューション企業様/CPA56%改善/直近15ヶ月で商談25件」。同業種の実績がわかればファクトとして機能する
顧客の掲載許可が取れない成果が出たタイミングで依頼する成果が出ている段階では満足度が高く、掲載にも協力的。契約時に「成果が出た場合は匿名で事例掲載させていただく場合がございます」と一言添えておくと後の依頼がスムーズ
そもそも事例がまだ少ない事例以外のファクトから始めるサービス運用で見えた業界の傾向を独自レポート化する、サービスの設計思想をコラム記事として公開する等。今ある知見のコンテンツ化が先

「まだ事例がないからファクトが出せない」と止まるのではなく、上記のいずれかから着手することが蓄積の第一歩になります。

▶ 事例コンテンツの具体的な作り方は、以下の記事で解説しています。

商材ブランドと企業ブランドの関係

BtoBの検討フローは「商材→会社」の順序で進みます。ターゲットはまず「○○の課題を解決するサービス」を探し、候補を比較検討した後に「このサービスを提供している会社は信頼できるか」を確認します。

商材ブランドが入り口、企業ブランドが後押し

フェーズターゲットの判断基準必要なブランド
検討候補に入る「このサービスは自社の課題を解決できそうか」商材ブランド
比較検討で選ぶ「このサービスは成果を出しているか」商材ブランド
最終判断で決める「このサービスを提供している会社は信頼できるか」企業ブランド

商材ブランドがなければ検討候補にすら入りません。一方で企業ブランドがなければ最終判断で落とされるリスクがあります。両方が必要ですが、優先すべきは商材ブランドです。

企業ブランドは商材ブランディングの活動から自然に蓄積される

商材ブランディングの活動(事例公開・ウェビナー登壇・SNS発信)を続けていると、企業ブランドも自然に蓄積されていきます。「あのSNS広告運用サービスの会社」→「あの会社はBtoBマーケティングに強い」という認知の広がりが起こります。

最初から「企業ブランド」と「商材ブランド」を別々に設計する必要はありません。まずは商材ブランディングに集中し、その活動が企業ブランドの蓄積にもなるという構造を意識するだけで十分です。

商材ブランディングに本腰を入れるタイミングの判断基準

以下の3つのうち2つ以上が当てはまる場合は、商材ブランディングへの投資を本格化するタイミングです。

判断基準確認方法
セールスマーケティングの「型」ができている広告→リード獲得→営業フォロー→商談のフローが回っており、月間の商談数が安定している
競合サービスとの差別化が必要になっているコンペで「サービスの認知度で負けた」「名前を知らない」という理由で候補に入れてもらえない
紹介や指名検索の「芽」が出ている既存顧客からの紹介が月に1件以上ある。またはサービス名での検索流入が増加傾向にある

まとめ

本記事で解説したポイントを整理します。

商材ブランディングの考え方

  • BtoB商材ブランディングとは「○○ならこのサービス」と想起される状態を作る活動
  • BtoBの検討は「商材→会社」の順で進むため、商材ブランドが入り口になる
  • 生成AI時代、ブランドの根拠はイメージからファクト(実績や事例などの事実情報)に移りつつある

進め方の構造

  • 施策の前に土台(誰の・どんな課題を・どう解決する・なぜこのサービスか)を定義する
  • 「商材を知らせる→価値を証明する→想起させ続ける」の3軸を循環させる
  • 施策はコンテンツ資産・デリバリーチャネル・受け皿の3分類で組み立てる

実行と計測

  • 3つの詰まりパターン(認知・理解・想起)を診断し、フェーズに合った施策から小さく始める
  • KPIは「実行→接触→信頼→想起→事業成果」の5段階で下位から追う
  • 施策が生むファクトをWeb上に残し続けることが、AI時代に検討候補へ入る条件になる

記事を読み終えたあとの次のアクション

本記事の内容を自社で実践するための3ステップです。

ステップ1:土台の4つの問いに答える

「誰の・どんな課題を・どう解決する・なぜこのサービスか」を書き出し、自社の立ち位置を1文にまとめます。営業担当への「選ばれた理由」ヒアリングから始めると、深掘りがしやすくなります。

ステップ2:自社の「詰まり」を診断する

認知・理解・想起の3パターンのうち、自社サービスがどこで詰まっているかを特定します。詰まりに対応する軸(知らせる・証明する・想起させ続ける)が、最初に投資すべき領域です。

ステップ3:各軸から1〜2施策を選んで始める

フェーズ別の優先施策を参考に、コストをかけずに始められる施策(導入事例の公開・登壇の記事化・経営者の個人SNS発信)から着手します。施策が生んだファクトをWeb上に残すことを忘れずに進めてください。

フラグアウトのBtoB商材ブランディング支援

当社フラグアウトでは、本記事で解説した商材ブランディングの設計から「SNS企業アカウント運用・カンファレンス型イベント(イベントブランディング)・ウェビナー支援」までを一気通貫でご支援しています。「商材を知らせる→価値を証明する→想起させ続ける」の3軸を踏まえた施策設計と、ファクトの蓄積を前提とした運用を得意としています。

「自社サービスのブランディングをどこから始めればよいかわからない」「施策はやっているが指名検索や紹介が増えない」「セールスマーケティングの活動を商材ブランドの蓄積につなげたい」「サービスサイトを見ても他社との違いが伝わらないと言われる」「事例公開のハードルを越えられない」「ブランディングの効果測定の方法がわからない」といったお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

商材ブランディングのご相談は、以下のお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

BtoB商材ブランディングに関するよくある質問

Q
BtoB商材にブランディングは必要ですか?
Q
商材ブランディングの効果はいつ出ますか?
Q
商材ブランディングと企業ブランディングの違いは何ですか?
Q
少人数でも商材ブランディングはできますか?
Q
商材ブランディングにはいくらかかりますか?
Q
導入事例が少なくてもブランディングは始められますか?